5歳児健診ポータル

supported by こども家庭庁

協力して実施している、保育園単位での集団健診

石川県志賀町

金城大学 看護学部 准教授

子吉 知恵美

石川県志賀町で実施されている5歳児健診を取材しました。

5歳児健診の予算化を契機に、受診率は100%に

志賀町では、もともと年中児巡回相談を実施していました。

5歳児健診の予算化を契機に、年中児巡回相談を5歳児健診に移行する形で進められました。
1回の受診者数は8人程度で月1回実施予定となっており、受診率は現時点で100%です。

移行をはじめた当初について、担当の保健師さんは次のようにお話されています。

「5歳児健診の担当医は、1歳6か月児健診、3歳児健診を担当してくださっている小児科医で、町内保育園の園医でもあります。町の子どもたちをよく知っていますし、子どもたちも先生のことをよく知っています。健診担当医も5歳児健診実施に賛同してくださり、医師の確保に問題はありませんでした。

石川県内で唯一5歳児健診を実施している町に健診の見学に行く際も、見学のお願いを医師経由でしてくださり、見学も一緒に行くなど、精力的に健診開始前から協力してくださいました。

5歳児健診で集団行動を確認する場面では、見学した町のやり方に倣い、各児童の在籍する園の保育士2人に協力を得ていますが、保育士の協力もスムーズに得られました」

担当保健師が語る成果や、実施してよかったこと

5歳児健診を開始してよかったこととして、3歳児健診から就学時健診までの期間が空くため、その間に見れることはよいと感じています。

年長になって就学相談があることや小学校に通級があることを説明する機会がなく、5歳児健診実施前は年中児巡回相談の際にしおりを渡していました。

しかし5歳児健診実施時に就学相談や小学校に通級があることについても、5歳児健診実施時に教育委員会から1名参加してもらい、説明をする機会を設けることができたことはよかったです。

保育園から小学校に情報をつなげていきやすくなったと思います。

特性を早期に発見することで、入学前に対処方法を相談できることがメリットだと思います。不登校や心身症を未然に防ぐ一助にもなるのではないかと思います。

5歳児健診後のフォローについては、専門医療機関が少なく、受診までの待機時間が長くなる傾向があります。5歳児健診の準備と併せて、ペアレントトレーニングや療育教室も充実させておく必要があると感じました。

取材をして感じたこと

これまで年中児巡回相談を実施していた関係職種間の連携体制があったことを活かし、園医であり健診医でもある医師の協力を得ながら、スピーディーに5歳児健診を開始されていました。

課長さん、保健師さん、医師、保育士などの関係職種が子どもたちの就学前の支援の必要性を感じ、柔軟かつ協力的に進められる関係性があったことを感じました。

今後は、健診後の支援体制整備が追い付いていない状況に対し、ペアレントトレーニングや療育教室の実施も考えられています。

課長さんの理解に加え、保健師さん医師の行動力、調整力に感服しました。

石川県志賀町の5歳児健診実施データ

自治体名
石川県志賀町
設置区分
補助金利用の有無
あり(母子保健衛生費国庫補助金)
年間出生児数
〜50人
実施形式
保健センター等での集団健診
実施開始年度
2024年
実施回数
年7回
1回の人数
10名以内
参加職種
小児科医 / 保健師 / 保育士 / 栄養士 / 教育委員会スタッフ
医師の確保方法
園医に依頼
医師確保の工夫
特になし。当町は園医が小児科医。
健診の流れで
実施している事柄
  • 事前カンファレンスを実施している
  • 事前に保育所・園からこどもの様子について情報を得ている
  • 保育所・園からの情報について、保護者から同意を書面で得ている
  • 保護者からSDQやその他アンケートを実施している
  • 保育所・園からSDQやその他アンケートを実施している
  • 健診当日に保健指導(育児環境支援・生活習慣・育てにくさへの対応等)を実施している
  • 健診当日に専門相談(子育て相談・栄養相談・療育相談・心理発達相談・教育相談等)を実施している
  • 健診後カンファレンスを実施している
健診の流れについての工夫
特にないですが、当町は、受付→問診→集団遊び→診察→教育相談→栄養相談→保健指導(療育相談)→希望者のみ保育相談という流れになっております。
専門相談
子育て相談 / 栄養相談 / 療育相談 / 教育相談
ニーズの高い
専門相談
療育相談
専門相談の後の対応
  • 医療機関紹介
  • / 療育機関紹介
  • / 通園施設でフォロー
  • / 園・保育所との情報共有
  • / 遊びの教室
こども一人あたりの
医師の診察時間
5-10分
保健師による1回の
個別相談時間
5-10分
健診後カンファレンスへの
医師の参加
参加していない
実施の上で感じる課題
健診で発達障害が疑われて、親が療育を始めたいと思っても地域の療育センターや医療機関の予約がすぐに取れない。どの機関も4か月~半年待ち。
5歳児健診のメリット
  • 発達課題の抽出
  • / 保護者の不安への対応
  • / 就学への指導対応

このサイトの運営者

本サイトは、令和6年度こども家庭科学研究費補助金 成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業「こどもの健やかな成長・発達のためのバイオサイコソーシャルの観点(身体的・精神的・社会的な観点)からの切れ目のない支援の推進のための研究」により制作されました。

研究代表者:永光 信一郎(福岡大学医学部小児科 主任教授)

Eメール:snagamit@fukuoka-u.ac.jp