5歳児健診ポータル

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熱意ある産婦人科医をきっかけに始まった、喜界島の5歳児健診

鹿児島県喜界町

鳥取県立総合療育センター院長代理

小枝 達也

喜界町の5歳児健診について、保健師さんに電話取材をしました。

離島での5歳児健診、保健師が感じている成果

喜界町は鹿児島から南に約38kmのところにある、鹿児島県の離島。奄美群島内で最も北東部に位置しており、洋上に浮かぶ隆起サンゴ礁の島です。

人口は約6千人で、出生数は年間約30人。島内医療機関の産婦人科医が、平成22年から巡回方式の5歳児健診を実施しており、年10回の健診が行われています。1回の健診で約6人が受診し、受診率はほぼ100%だそうです。

発達の課題を健診医から指摘され不安を感じた保護者には、保健師さんが話を聞いたり、園と連携をとって支援をされています。発達検査はなかなかできませんが、町在住の心理士さんや学校の先生に協力してもらい、可能な範囲で実施されているそうです。

保健師さんが「5歳児健診をやってよかった」と思われる瞬間は、「3歳児健診後に子どもたちと関わる機会がなくなっていたものの、5歳児健診を通じてその後の育ちの様子を知ることができたとき」だと話してくれました。

また、園を巡回するうちに保育士さんと顔の見える関係ができていくこともよかった点だそうです。

健診をはじめた産婦人科医の思いと、今後必要なこと

実は、喜界町で5歳児健診を継続できた理由は、産婦人科医の先生の熱意からでした。

令和7年度にその医師が退職予定のため、5歳児健診が継続できるかどうかを心配する声があります。保健師さんは「島外から交代で小児科医の先生が来てくだされば嬉しい」と期待されているそうです。

熱意ある産婦人科の先生にお話を聞きました。

「私は離島での医療経験が28年と長くなっており、産婦人科の診療に加えて小児も診ています。乳幼児健診にも出務していますが、3歳児健診で健診は終わりになるため、その後のお子さんのことが気になっていました。

就学支援委員会の委員も務めていますので、3歳児健診では特に指摘のなかったお子さんが就学支援委員会に上がってきます。3歳児健診の後に何らかの健診が必要だと思っていたところ、鳥取県で5歳児健診が行われていることを知りました。

そこで小枝先生の外来に陪席させてもらい、発達障害の幼児の診察について学びました。5歳児健診にも参加させてもらい、そのノウハウを取り入れて2007年度から5歳児健診を始めました。

数か所の市町に実施を働きかけましたが、応じてくれたのは喜界町と屋久島町の2か所です。健診で発達が気になったお子さんは自分の外来で経過を観察し、より専門的な医療が必要なお子さんは鹿児島市の病院などを紹介しています。

5歳児健診が実施できたことにより発達健診・進路相談にとどまらず、母子関係を踏まえた上で、そのお子さんの特性を見極め、予見し、将来の展望をも示唆する場に成り得たことがよかったと実感しています。

全国に5歳児健診が広がるためには、5歳児健診に特化した研修の場が必要だと感じています。」

鹿児島県喜界町の5歳児健診実施データ

自治体名
鹿児島県喜界町
設置区分
補助金利用の有無
あり(母子保健衛生費国庫補助金)
年間出生児数
〜50人
実施形式
巡回方式での集団健診
実施開始年度
2010年
実施回数
年10回
1回の人数
10名以内
参加職種
小児科医 / 保健師 / 保育士
医師の確保方法
近隣の市中病院に依頼
医師確保の工夫
令和7年度より、担当医師が退職予定のため、医師の確保をどのようにされているか知りたいです。
健診の流れで
実施している事柄
  • 事前に保育所・園からこどもの様子について情報を得ている
  • 保護者からSDQやその他アンケートを実施している
  • 保育所・園からSDQやその他アンケートを実施している
  • 後日に専門相談(子育て相談・栄養相談・療育相談・心理発達相談・教育相談等)を実施している
  • 健診後カンファレンスを実施している
専門相談
心理発達相談
ニーズの高い
専門相談
心理発達相談
専門相談の後の対応
  • 療育機関紹介
  • / 園・保育所との情報共有
こども一人あたりの
医師の診察時間
10-20分
保健師による1回の
個別相談時間
3-5分
健診後カンファレンスへの
医師の参加
参加している
実施の上で感じる課題
5歳児健診後の発達検査が必要な方に、発達相談(検査)をする機会が限られてしまっていることです。
5歳児健診のメリット
  • 生活習慣の指導
  • / 保護者の不安への対応
  • / 就学への指導対応

このサイトの運営者

本サイトは、令和6年度こども家庭科学研究費補助金 成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業「こどもの健やかな成長・発達のためのバイオサイコソーシャルの観点(身体的・精神的・社会的な観点)からの切れ目のない支援の推進のための研究」により制作されました。

研究代表者:永光 信一郎(福岡大学医学部小児科 主任教授)

Eメール:snagamit@fukuoka-u.ac.jp