5歳児健診ポータル

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選抜方式から悉皆健診へ

鹿児島県屋久島町

国立成育医療研究センター 副院長

小枝 達也

屋久島町の5歳児健診について、電話インタビューをしました。

国の補助をきっかけに、悉皆健診へ

屋久島町では、令和6年6月から悉皆の5歳児健診が始まりました。1回の受診者数は10~20名程度で、年間の実施回数は5回。受診率は95%になります。

実は屋久島町では、悉皆健診の前は約20年間、希望された園だけ選抜方式の健診を実施していました。悉皆の5歳児健診への変更については、国の補助が始まったことが大きく影響し、管理職の理解も得られ、今まで実施していなかった園からも健診開始の希望が寄せられました。

専門職がいないことによる苦労も

一方で、苦労されたことは、5歳児健診の診察内容や目的を健診医に理解してもらうことや、健診内容、保健指導のための資料を作成することだったそうです。

お医者さんも発達の専門医ではなかったので、診察に不安をいだいていたそうです。そのため、保健師が言語面と運動面をチェックし、その結果を診察時に健診医に提示。医師の診察、判定をしやすくすることで、健診の協力をいただけたそうです。

担当の保健師さんは次のようにお話されています。

「実際に始めると、心理職などの専門職がいないので、当日に専門職による発達相談までできず保健指導が大変でした。子どもたちも緊張しているみたいでした。

でも、健診をやっていなかった園の先生が新しい気づきがあったと喜んでくださり、5歳児健診をきっかけに、保護者がお子さんの課題に積極的になってくれた感じがします。

専門相談が必要なお子さんの結果は、保護者と園と一緒に面談しながら返しています。」

取材をして感じたこと

屋久島町では、発達に課題のあるお子さんに気づき、その子と家族を支援するきっかけとなる場が必要であることから、長きにわたり選抜方式の健診を行って来られました。

その実績があったからこそ、各方面の理解が得られスムーズに悉皆の5歳児健診に移行できたことがよく分かりました。

地道な保健活動が実を結んだことに、心から敬意を表したいと思います。

鹿児島県屋久島町の5歳児健診実施データ

自治体名
鹿児島県屋久島町
設置区分
補助金利用の有無
あり(母子保健衛生費国庫補助金)
年間出生児数
〜50人
実施形式
保健センター等での集団健診
実施開始年度
2024年
実施回数
年5回
1回の人数
10〜20名
参加職種
小児科医 / 保健師 / 看護師 / 栄養士 / 行政事務職
医師の確保方法
近隣の市中病院に依頼
医師確保の工夫
小児発達の専門医ではない小児科医のため、医師自身も診察に不安をいだいていた。そのため、保健師が言語面と運動面をチェック(『5歳児健診~発達障害の診察・指導エッセンス~』小枝達也編著に記載されている診察項目を参考)し、その結果を診察時に提示し、医師の診察、判定をしやすくすることで、健診協力をしていただけた。
健診の流れで
実施している事柄
  • 事前カンファレンスを実施している
  • 事前に保育所・園からこどもの様子について情報を得ている
  • 保育所・園からの情報について、保護者から同意を書面で得ている
  • 保護者からSDQやその他アンケートを実施している
  • 保育所・園からSDQやその他アンケートを実施している
  • 健診当日に保健指導(育児環境支援・生活習慣・育てにくさへの対応等)を実施している
  • 後日に専門相談(子育て相談・栄養相談・療育相談・心理発達相談・教育相談等)を実施している
  • 健診後カンファレンスを実施している
健診の流れについての工夫
本来は医師が診察時に言語面、運動面の発達チェックを実施すべきなのだとは思うが、チェックには1人約10分程度かかる(時間のかかる子は15分で終了するようにしている)ので、医師1人では時間がかかりすぎる。そのため、保健師が4~5名で発達チェックし、その結果を医師が確認し、さらに必要な情報を診察時に確認し判定してもらうようにしている。
専門相談
子育て相談 / 栄養相談 / 療育相談 / 心理発達相談 / 教育相談 / その他
言語相談、運動発達相談
ニーズの高い
専門相談
心理発達相談
専門相談の後の対応
  • 医療機関紹介
  • / 療育機関紹介
  • / 通園施設でフォロー
  • / 園・保育所との情報共有
こども一人あたりの
医師の診察時間
3-5分
保健師による1回の
個別相談時間
10-20分
健診後カンファレンスへの
医師の参加
参加していない
実施の上で感じる課題
園から事前アンケートをもらったり、判定結果が要経過観察以上の児については園と保護者との面談が必要だったり、とても労力がいる。専門相談が必要な子の受け皿の確保も新たに必要になってくるため、マンパワー不足をとても感じる。 健診当日は、協調運動や体のバランス面で経過観察になる子が多いので、PT又はOTの協力を得られるとより精度があがると思うが、雇用確保が難しい。
5歳児健診のメリット
  • 発達課題の抽出
  • / 保護者の不安への対応
  • / 就学への指導対応

このサイトの運営者

本サイトは、令和6年度こども家庭科学研究費補助金 成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業「こどもの健やかな成長・発達のためのバイオサイコソーシャルの観点(身体的・精神的・社会的な観点)からの切れ目のない支援の推進のための研究」により制作されました。

研究代表者:永光 信一郎(福岡大学医学部小児科 主任教授)

Eメール:snagamit@fukuoka-u.ac.jp