5歳児健診ポータル

supported by こども家庭庁

5歳児健診を始めて40年。日本で最初に始めた町

神奈川県川崎市

すずか小児科・皮ふ科クリニック 院長 鈴鹿隆久先生(写真右)、矢川綾子先生(写真左)

福岡大学医学部小児科 主任教授

永光 信一郎

人口155万人である川崎市で5歳児健診が始まったのは1985年です。

年間出生数が約1.1万人の川崎市では協力医療機関での個別健診方式で5歳児健診が実施されています。2024年7月、川崎市宮前区のすずか小児科・皮ふ科クリニックを訪問。

3人の男の子の5歳児健診を見学させてもらいました。

こどもの成長と、親の不安を支える現場

問診票は事前に市から自宅に郵送されていました。

保護者は、自宅で問診票を記載し、検査用のおしっこと一緒に持って来られていました。問診票をお医者さんが確認して、身長/体重/肥満度を曲線にプロット。

さあ、診察です。

  • こどもにインタビュー(名前、年齢、園の名前・組、先生の名前)
  • こどもの診察(身体)(聴診、のど、お腹、背中、生殖器)
  • こどもの診察(行動)(片足立ち、ケンケン、四角を書く)
  • こどもの理解(靴は何をするもの? 帽子は? じゃんけん、しりとり)

そして、評価を保護者にお伝えする。

こどもと保護者が診察室に入って、すべてが終了するまでは約10分でした。かかりつけでの健診だったので、こどもも保護者も安心して、健診を受けていました。

でも、3人目の男の子。

ガタガタ、ゴトゴト。立ったり座ったり、クルクル回ったり。

矢川先生が尋ねるも、お母さんは「心配していません」と言われます。

「でも・・。兄は支援学級に行っています・・・。」と小さな声で吐露されました。

矢川先生は、さっと引き出しから別の問診票と保育園への手紙を取り出し、

「お母さん。保育園の先生とお母さんに、記載してもらえますか?保育園での様子も確認してみましょう。また、2週間後にここでお会いできますか?」

お母さんは小さく頷かれました。

予想外の出来事と、そこに見えた医療者の心

矢川先生はこどもたちに小さなプレゼントを渡されていました。「今日は来てくれてありがとう」なぜだろう?と私は思いました。

当初、健診を受ける予定だったお子さんたちが発熱してキャンセル。

福岡市からわざわざ5歳児健診を見学に来られる!

慌てて、かかりつけの家庭に電話をして、クリニックに急遽受診してもらったそうです。

そのお礼のプレゼント。

矢川先生、鈴鹿先生、ありがとうございました。

神奈川県川崎市の5歳児健診実施データ

自治体名
神奈川県川崎市
設置区分
政令指定都市
補助金利用の有無
あり(母子保健衛生費国庫補助金)
年間出生児数
1,001人〜
実施形式
医療機関委託による個別健診
実施開始年度
1985年
実施回数
個別健診のため随時
1回の人数
10名以内
参加職種
小児科医 / 小児科医以外の医師 / 保健師 / 看護師 / 行政事務職
医師の確保方法
地区の医師会に依頼
医師確保の工夫
市医師会と相談しながら行っている
健診の流れで
実施している事柄
  • 健診当日に保健指導(育児環境支援・生活習慣・育てにくさへの対応等)を実施している
  • 後日に専門相談(子育て相談・栄養相談・療育相談・心理発達相談・教育相談等)を実施している
健診の流れについての工夫
個別健診で実施している
専門相談
その他
個別健診のため〇〇相談というくくりはない
ニーズの高い
専門相談
その他
個別健診のため〇〇相談というくくりはないが、心理発達相談のニーズは高い
専門相談の後の対応
  • 保健所でフォロー
  • / 医療機関紹介
  • / 療育機関紹介
  • / 通園施設でフォロー
  • / 園・保育所との情報共有
こども一人あたりの
医師の診察時間
10-20分
保健師による1回の
個別相談時間
20分以上
健診後カンファレンスへの
医師の参加
参加していない
実施の上で感じる課題
他の健診に比べ一人当たりの診察時間が長くなる傾向がある。 医師のスキルに差があることが課題と医師会より意見をいただいている。 個別健診なので、タイムリーに専門相談を提供することは難しい。 専門機関へ紹介後の実態が、紹介した医療機関にフィードバックされる仕組みに課題がある。個別健診で実施しているため、国が求めている集団健診での手法(他職種連携や、当日のカンファレンスなど)を実施できないため、実施方法にさらに工夫が必要と考えている。
5歳児健診のメリット
  • 生活習慣の指導
  • / 発達課題の抽出
  • / ネグレクト、養育困難家庭の発見

このサイトの運営者

本サイトは、令和6年度こども家庭科学研究費補助金 成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業「こどもの健やかな成長・発達のためのバイオサイコソーシャルの観点(身体的・精神的・社会的な観点)からの切れ目のない支援の推進のための研究」により制作されました。

研究代表者:永光 信一郎(福岡大学医学部小児科 主任教授)

Eメール:snagamit@fukuoka-u.ac.jp