5歳児健診ポータル

supported by こども家庭庁

こどもが健やかに暮らせるまちを地域連携で実現

大阪府富田林市

福岡大学医学部小児科 主任教授

永光 信一郎

5歳児健診ポータルサイトに取材記事を掲載するために、視察に応じてくださる自治体を探していました。

しかも、令和6年度に5歳児健診を開始された自治体はないか・・・。さぞかし立ち上げに苦労されただろう。そのお話も聞きたい・・・。

独自の「富田林市5歳児健診マニュアル」

人口約11万人弱・出生数約550人の富田林市では、令和6年7月から5歳児健診をスタートされていました。

お電話をすると「他の自治体さんも見学に来られますが、一緒でよければ」と快諾いただきました。

保健センターを訪問し、担当保健師さんから最初に渡されたものは、23ページからなる「富田林市5歳児健診マニュアル」でした。

「(えっ?な、なにこれ?す、すごい)誰が作られたんですか?」


3月に研究班から出た健診マニュアルを担当保健師さんが熟読され、さらに小枝先生の参考資料を読み、独自の富田林市マニュアルを保健師さんが作られていました。そして、実施前の準備・調整の経緯も、2枚の紙にまとめてくださっていました。

そちらの経緯を紹介させていただきます。

<4月>
問診票・マニュアルの作成。心理士さんに心理相談の様式について教えていただいたそうです。マニュアルのたたき台を小児神経専門医に見ていただき、健診医とも、5歳児健診の目的が「気になる特性があるが支援につながっていない子を、小学校入学に向けて相談等に繋ぐ!」ことであることを互いに確認されました。

<5月>
小学校校長会で連携方法について相談され、保育所・幼稚園へ協力・連携のお願い。

<6月>
職員・非常勤職員へのマニュアルについて説明され、健診日に行う集団遊びの内容を保育士さんと確認。5歳児健診を実施している近隣市町村への視察。そして、なんと、出務医師全員に個別に1人ずつ、マニュアルと健診の流れについて説明をされに行かれたそうです。お医者さんも5歳児健診は初めての経験だから・・・。

地域の連携が得られ、3ヶ月の期間で実現

富田林市では、4か月児健診・1歳7か月児健診・3歳6か月児健診、すべて保健センターでの集団健診です。

「新たに5歳児健診を始めることで、人・場所・時間の負担はなかったのか」が気になりましたが、小児神経専門医や市中病院、個別医療機関の理解と支援が得られたことから、比較的スムーズに始めることができたそうです。

しかし、3ヶ月の期間でマニュアルを作りあげ、関係機関への説明と協力依頼を行い、健診実施にたどり着いた行政機関の機動力と行動力には驚きました。

課題をもつお子さんと保護者さんが小学校入学後に苦労されている姿を見てきて、「5歳児健診」が解決策のひとつになるチャンスと思われたのかもしれません。

富田林市では「こどもが健やかに暮らせるまち作り」に励んでおられました。

大阪府富田林市の5歳児健診実施データ

自治体名
大阪府富田林市
設置区分
市(10万人以上)
補助金利用の有無
あり(母子保健衛生費国庫補助金)
年間出生児数
501〜600人
実施形式
保健センター等での集団健診
実施開始年度
2024年
実施回数
年18回
1回の人数
40〜50名
参加職種
小児科医 / 保健師 / 保育士 / 心理職 / 看護師 / 栄養士 / 行政事務職
医師の確保方法
地区の医師会に依頼・近隣の市中病院に依頼・近隣の開業医に直接依頼
医師確保の工夫
既存の健診に協力いただいている医療機関や医師に依頼した。
健診の流れで
実施している事柄
  • 事前カンファレンスを実施している
  • 事前に保育所・園からこどもの様子について情報を得ている
  • 保護者からSDQやその他アンケートを実施している
  • 健診当日に保健指導(育児環境支援・生活習慣・育てにくさへの対応等)を実施している
  • 健診当日に専門相談(子育て相談・栄養相談・療育相談・心理発達相談・教育相談等)を実施している
  • 後日に専門相談(子育て相談・栄養相談・療育相談・心理発達相談・教育相談等)を実施している
  • 健診後カンファレンスを実施している
健診の流れについての工夫
まだ開始して3回目で試行錯誤している段階ですが、健診会場のスペースが限られており、各場面であまり人が多くなりすぎないように工夫しています。(診察で待ち時間が多くなってくると、その前段階をゆっくりすすめる等)
専門相談
子育て相談 / 栄養相談 / 心理発達相談
ニーズの高い
専門相談
心理発達相談
専門相談の後の対応
  • 医療機関紹介
  • / 療育機関紹介
  • / 通園施設でフォロー
  • / 園・保育所との情報共有
こども一人あたりの
医師の診察時間
5-10分
保健師による1回の
個別相談時間
10-20分
健診後カンファレンスへの
医師の参加
参加していない
実施の上で感じる課題
SDQを活用しているが、数値算出等に時間がかかる割には活用ができていない。ガイドラインがないため、市で独自の基準を決めて実施しているため評価が難しい。スタッフのスキルアップ。医師や心理職の確保については、不安定であり来年度も同じ人員でできるか不安。
5歳児健診のメリット
  • 生活習慣の指導
  • / 発達課題の抽出
  • / 保護者の不安への対応

このサイトの運営者

本サイトは、令和6年度こども家庭科学研究費補助金 成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業「こどもの健やかな成長・発達のためのバイオサイコソーシャルの観点(身体的・精神的・社会的な観点)からの切れ目のない支援の推進のための研究」により制作されました。

研究代表者:永光 信一郎(福岡大学医学部小児科 主任教授)

Eメール:snagamit@fukuoka-u.ac.jp