5歳児健診ポータル

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5歳児健診、抽出から集団健診へ〜令和8年度に向けて動き出した松江市〜

島根県松江市

5歳児健康診査事業検討会議 委員長
たくわ小児科クリニック 院長

多久和 哲

5歳健診は原則として集団健診へ

令和5年12月28日

仕事納めの日に、こども家庭庁からの事務連絡あり!

5歳児健康診査の実施体制を整備すること。

健康診査の種類は、原則、市町村保健センター等において行う集団健康診査とする。

「え?」

平成23年からSDQのアンケートを使用した抽出健診をスタート。見直し続けた13年間の成果。抽出健診・・・・いいものに仕上がってきたと思っていたのだが・・・。

松江市は抽出健診の継続を考えていた

令和6年3月13日

松江市で「5歳児健康診査事業検討会議」が開催された。

2つの理由から令和6年度も、現在の抽出健診での実施を継続することになった。

  • 各相談事業で5歳の前よりすでに支援につながっている子もいる。
  • 悉皆の集団健診実施となると、日程や医師・スタッフの確保が困難である。

日本小児科学会島根地方会前夜の出来事

令和6年6月15日

島根県小児科医会の共催で日本小児科学会島根地方会が開催される。特別講演には研究班代表の永光信一郎先生。久留米大学で一緒に仕事をしたことがある。前夜、永光先生とお話しする機会をいただいた。

「松江市はSDQを使った抽出健診を続けたいのですが・・・・」

「集団健診に向けてぜひ頑張っていただきたい。今後2~3年を目途に・・・」と永光先生。

6月7日にこども家庭庁から発出された事務通知のことを教えて頂いた。

「一定の成果も出ていて、健診方法を変えるのは残念ですが、これから皆で検討してみます」と返事をしたが、内心は“どうしたらいいのだろう・・・・・”と、穏やかではなかった。

日本小児科医会からのメッセージ

令和6年6月28日

「折角のチャンスを逃すことがないよう、小児科の総力をあげてこれらの健診が全国で実施されるように!」と小児科医会からメッセージが届いた。

永光先生が言われていた2~3年後のことも書かれていた。

松江市こども家庭支援課の担当保健師にこの内容を伝え、他の自治体での現在の実施状況なども調べてもらうことにした。

結果は様々で、5歳児健診自体をしていない自治体、抽出健診でもSDQを使用していない自治体・・・。

とにかく、なんとかしないといけないと思い、今後の健診方法の変更も含め年度末の検討会議を前倒しすることにした。

5歳児健康診査事業検討会議 当日

令和6年10月10日

委員長、副委員長、委員、松江市発達・教育相談支援センター(エスコ)、松江市こども家庭支援課の合計20名が出席して会議が開催された。

5歳児健康診査の体制を現在の「スクリーニング方式」から「全員健診方式」へ見直すことを検討したいと、行政から提案があった。

理由として、出生後から就学前までの切れ目ない全員を対象にした健診の実施が求められていること、そして令和8年から実施予定の健康管理システムも全員を対象にしている。

参加者からは賛同の声があがった。

  • 必要な人に必要な支援が届く健診を。
  • 保育園、幼稚園、認定こども園等との連携を。
  • 保護者の気づきと、気になる子どもの相談のよい機会になる。
  • 園を訪問しての巡回方式や、園医の先生と一緒に園医方式も検討を。
  • 全員健診方式への変更が望ましい。松江市版のマニュアルを作成しよう。

松江市に適した健診方法を模索していく

具体的な方法については、様々な意見が出たが、最終的な結論には至らず。

健診方法は必要な人に必要な支援を届けることができるよう、令和8年度に向けて松江市にあったやりかたを模索していくこととなった。

今後、集団健診を前提とした準備スケジュールの提案が松江市からあった。

実施内容の検討会を2〜3回(4〜9月)

→実施内容が確定後、研修会を3回(10〜1月)

→マニュアル作成(10〜1月)

→問診票等書式の変更(10〜12月)

→健診案内準備発送(1〜2月)

令和7年度、松江市に適した健診方法について更に検討していくこととした。    

島根県松江市の5歳児健診実施データ

自治体名
島根県松江市
設置区分
中核市
補助金利用の有無
あり(母子保健衛生費国庫補助金)
年間出生児数
1,001人〜
実施形式
問診票等によるピックアップ方式による集団健診
実施開始年度
2011年
実施回数
年16回
1回の人数
10〜20名
参加職種
小児科医 / 保健師 / 保育士 / 心理職 / 教育委員会スタッフ / 行政事務職 / その他
医師の確保方法
近隣の開業医に直接依頼
健診の流れで
実施している事柄
  • 事前カンファレンスを実施している
  • 保護者からSDQやその他アンケートを実施している
  • 保育所・園からSDQやその他アンケートを実施している
  • 健診当日に保健指導(育児環境支援・生活習慣・育てにくさへの対応等)を実施している
  • 健診当日に専門相談(子育て相談・栄養相談・療育相談・心理発達相談・教育相談等)を実施している
  • 後日に専門相談(子育て相談・栄養相談・療育相談・心理発達相談・教育相談等)を実施している
  • 健診後カンファレンスを実施している
専門相談
子育て相談 / 心理発達相談 / 教育相談
ニーズの高い
専門相談
教育相談
専門相談の後の対応
  • 通園施設でフォロー
  • / 園・保育所との情報共有
  • / その他
  • 教育委員会職員による所属施設視察
こども一人あたりの
医師の診察時間
10-20分
保健師による1回の
個別相談時間
10-20分
健診後カンファレンスへの
医師の参加
参加していない
実施の上で感じる課題
SDQアンケート結果から集団健診の対象に該当しても保護者の希望がなければ健診案内はせずに相談窓口の紹介にとどまっている。そのため、支援が必要な児が見逃されている可能性がある。
5歳児健診のメリット
  • 発達課題の抽出
  • / 保護者の不安への対応
  • / 就学への指導対応

このサイトの運営者

本サイトは、令和6年度こども家庭科学研究費補助金 成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業「こどもの健やかな成長・発達のためのバイオサイコソーシャルの観点(身体的・精神的・社会的な観点)からの切れ目のない支援の推進のための研究」により制作されました。

研究代表者:永光 信一郎(福岡大学医学部小児科 主任教授)

Eメール:snagamit@fukuoka-u.ac.jp