5歳児健診ポータル

supported by こども家庭庁

「気づきのギャップ」を埋めた5歳児健診チケット

静岡県富士市

絵本:だいじ だいじどーこだ? 遠見才希子(著), 川原瑞丸(絵) 大泉書店

金城大学 看護学部 准教授

子吉 知恵美

茨城県立医療大学保健医療学部 教授

山口 忍

(インタビュー者:子吉知恵美・山口忍)

静岡県富士市は、人口約24万人(2025年時点)を擁し、静岡県東部の「拠点都市」として周辺地域と連携し産業等の中核を担う大規模自治体である。同市は、令和7年度から集団健診による5歳児健診を開始した。

実施までの1年間 ― 関係職種との調整と保健師の知識向上

5歳児健診の準備は1年間で調整が進められた。保健師が、“1年で実現するためのタイムスケジュール”を立て、副市長や議員との勉強会開催、医師会や庁内連絡会議への説明等を通して、関係職種の理解が得られるよう調整に奔走した。また、5歳児健診の他自治体視察や、保健師の保育所等への派遣を通して5歳児理解の深化を図った。小枝達也先生の5歳児健診のDVDによる研修会や、若手保健師を中心とした発達障害と支援に関する勉強会を開催し、保健師の5歳児健診に対する知識向上を図った。

富士市の5歳児健診では、1時間で30~40人の健診を行うにあたり、診察は2名の小児科医が担当している。5歳児健診の実施の可否を検討する段階から、保健師と医師会医師との関係性が築かれていたこともあり、医師が限られた資源であることを踏まえ、負担の少ない体制を整えることが最優先とされた。実現可能な実施方法について協議を重ねることで、必要な医師体制を計画的に確保していた。

「5歳児健診チケット」がつなぐ関係性

受診にあたっては、園から保護者に配布された5歳児健診チケットを持参する。チケットは、年度のはじめに市から園に在籍する対象者分を年度ごと配布している。このチケットが、保育所や幼稚園と保護者、保健師を結ぶ架け橋ともなった。園から保健師への連絡はもちろん、園から保護者へ、「5歳児健診に向けて気になることはあるか?」といった話題を足がかりに、園での普段の様子や気になることを伝えるきっかけとなった。また健診事後に、「どうでしたか?」といった声かけも容易になった。5歳児健診および5歳児健診チケットが、園と保護者、保健師の子どもに関する「気づきのギャップ」を埋め、連携を容易にしたということであった。

保護者への集団教育の場としての5歳児健診

加えて、5歳児健診は保健師による保護者への集団教育の場ともなった。例えば、寝る前のメディア(テレビやスマホ等)使用を控えることや、絵本『だいじ だいじ どーこだ?』(遠見才希子(著), 川原瑞丸(絵) 大泉書店 発行年2021年)を教材とした5歳児からの性教育などの集団教育が行われている。このほか、口腔機能の啓発など、保健師が5歳児とその保護者の双方に直接会って支援を実施できる場として、5歳児健診が有意義かつ最大限に活用されていた。

健診後のフォローアップ体制

健診後のフォローアップ体制については、健診場面で気になる点があった場合、園での様子を踏まえた判定とするため、保護者の同意を得たうえで園と情報共有を行っている。また、療育につなげる必要があるケースで保護者の理解やニーズが得られない場合には、保健師が園訪問を丁寧に重ね、保護者に園での様子を伝えながら伴奏型支援となるよう寄り添った対応を行っている。さらに保育士への研修や小学校の校長経験者による園訪問を実施している保育幼稚園課とも連携しているほか、同意が得られている場合には、就学時にも健診情報を活用していく予定である。今後の課題としては、5歳児健診の評価方法の整理に加え、予想よりも支援が必要な子どもが多かったことから、支援体制、特に外国語を主に話す子どものフォロー体制をどのように構築していくかが挙げられる。

取材をした感想(子吉)

人口規模が多い自治体での集団健診の実施自治体を調べ、富士市にインタビューに行きました。1人の保健師さんが、5歳児健診を実施するまでの1年間に、スピーディーな計画、そして、関係職種と調整し、保健師の理解啓発のための研修会や勉強会の開催などを行っていました。その人間関係構築力と行動力が素晴らしく、感動しました。「5歳児健診を実施するためにどうするか」を考え、そこに向けて行動した場合、富士市のような大規模な自治体でも集団健診を実施できることが証明された事例でした。

静岡県富士市の5歳児健診実施データ

自治体名
静岡県富士市
設置区分
市(10万人以上)
補助金利用の有無
あり(母子保健衛生費国庫補助金)
年間出生児数
1,001人〜
実施形式
保健センター等での集団健診
実施開始年度
2025年
実施回数
年38回
1回の人数
30〜40名
参加職種
小児科医 / 小児科医以外の医師 / 保健師 / 保育士 / 言語聴覚士 / 作業療法士 / 心理職 / 栄養士 / 歯科医師・歯科衛生士 / 看護師 / 行政事務職 / その他(視能訓練士・理学療法士(不定期))
医師の確保方法
地区の医師会に依頼・近隣の市中病院に依頼
医師確保の工夫
日頃から顔の見える関係づくりを通じて信頼関係を構築するとともに、健診の趣旨や実施内容を共有し、医師が対応可能な診察方法について協議を重ね、役割を明確にしながら調整したこと。
健診の流れで
実施している事柄
  • 事前に保育所・園からこどもの様子について情報を得ている
  • 健診当日に保健指導(育児環境支援・生活習慣・育てにくさへの対応等)を実施している
  • 健診当日に専門相談(子育て相談・栄養相談・療育相談・心理発達相談・教育相談等)を実施している
  • 健診後カンファレンスを実施している
専門相談
子育て相談 / 栄養相談 / 療育相談 / 心理発達相談
専門相談の後の対応
  • 療育機関紹介
  • / 園・保育所との情報共有
  • / その他(個別支援(園訪問や電話による支援))
健診後カンファレンスへの
医師の参加
参加していない
実施の上で感じる課題
就学前の特性を早期に把握し、特性に応じた支援につなげるため健診体制を構築してきた。一方で、支援には一定のグラデーションを設け、本市として適切と考える支援を行っているものの、その内容や段階づけが、こども本人や保護者にどのような効果や意味を持つのかについては、各市で検証が必要ではないかとも考えており、この点に不安と課題を感じている。参照
5歳児健診のメリット
  • 生活習慣の指導
  • / 発達課題の抽出
  • / 保護者の不安への対応

このサイトの運営者

本サイトは、令和6年度こども家庭科学研究費補助金 成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業「こどもの健やかな成長・発達のためのバイオサイコソーシャルの観点(身体的・精神的・社会的な観点)からの切れ目のない支援の推進のための研究」により制作されました。

研究代表者:永光 信一郎(福岡大学医学部小児科 主任教授)

Eメール:snagamit@fukuoka-u.ac.jp