人口160万都市・福岡市の挑戦:5歳児健診モデル事業の実際と課題
福岡県福岡市
福岡大学医学部小児科 主任教授
永光 信一郎
福岡市は人口160万人の政令指定都市で、約13,000人の5歳児が健診の対象者となります。従来、4か月児・1歳6か月児・3歳児健診はすべて保健センターでの集団健診として実施されてきましたが、コロナ禍を契機に4か月児健診のみ個別健診へ移行しました。現在は、1歳6か月児および3歳児健診が集団方式で実施されています。
5歳児健診に向けた検討体制とモデル事業の位置づけ
5歳児健診の実施にあたっては、自治体の母子保健担当部局(こども未来局)を中心に、大学病院や地域の小児科医、児童精神科医、療育機関、教育委員会のメンバーで構成される検討会が設置されました。初回会議からは、医師である副市長も同席しています。
国が推奨する集団方式を、福岡市のような政令指定都市でどのように実施するかが議論され、まずは令和7年度にモデル事業として、5歳児健診を希望する500人を対象に実施することとなりました。健診は3か所で計12回行い、1回あたり40人程度を医師2~3人で診察し、課題の検証を行います。
福岡市独自の健診体制と当日の流れ
福岡市独自のマニュアル作成にあたっては、集団遊びのロールプレイをスタッフ間で実施し、その様子を動画で共有しました。
今回、5歳児健診を希望した理由としては、約半数の保護者が「新規の健診で関心があった」と回答し、残りの半数は「子どもの発達で気になることがある」「就学に向けて助言が欲しい」といった理由を挙げています。
健診当日は午後1時に受付を開始し、「集団遊び」「保健師問診」「計測」「医師診察」「事後カンファレンス」という流れで実施され、午後4時から5時頃に健診が終了します。診察後、発達等の面で支援が必要と判断された子どもについては、療育センターへ紹介されます。
モデル事業から明らかになった主な課題
モデル事業の実施を通じて、主に以下の課題が抽出されました。
- 医師2名体制の場合、診察に一定の時間を要するため、1回あたりの健診受診者数は最大30名程度が適切であること。
- 集団遊びは子どもの様子を把握するうえで有効である一方、心理士や保育士など専門職スタッフの確保が必要であること。
- 療育センター紹介後に経過観察となるケースもあるため、紹介基準の整理や、行政・かかりつけ医・保育園等を含めた相談体制の充実が重要であること。
今後の展望
令和8年度は、これらの課題に対応しながら、引き続き集団方式によるモデル事業を実施する予定です。